Vol.9

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辻和庭園

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Special Interview

スペシャルインタビュー

◎話しを聞いた人 代表/齋藤 和仁(さいとう かずひと)さん

鶴岡市の造園業。既存の庭木の管理だけでなく、これから庭を作りたいという方にも親身に相談に乗ってくれます。
代表の齋藤さんは心から自然を愛する人で、その土地に自生する雑木を使った庭づくりを提案して、自然風の庭を増やしたいと願っています。

取材を通して、庄内地域にも職人が受け継いでいるメッセージがたくさんあるということを知りました。
木を剪ることが仕事、キレイに整えるのが仕事と思っていた造園業の仕事は、実は木を育てることが最も肝心なところ。
毎日身近にある木々が、癒しの空間を作ってくれる。そのために庭木について少しこだわってみるのもいいかもしれませんね。
知識がなくても齋藤さんが丁寧に説明してくれます。話しを聞くだけでも楽しくなります。

自然の雑木庭を増やしたい

自分の心を癒してくれた自然に感謝して

2011年、東日本大震災のあった年に齋藤さんは造園業の仕事に就きました。最初はアルバイトでした。

学生時代から音楽が好きで自作の曲を作ったりしてのめり込んでいましたが、そろそろ仕事をしないといけないなと思った時に、たまたま飛び込んだ業界でした。

最初は慣れない仕事で大変でしたが、その中でまず最初に思ったのが、先輩たちの姿がカッコイイということでした。職人の使うハサミなど、これまで手にしたことがない道具の数々や法被姿に目を奪われました。自分もこんな風に昔ながらの日本の文化を身に纏って仕事をしたい、率直にそう思いました。当時は掃除から始まり、剪定など日々少しづつできることが増えていき、とても充実した日々でした。

しかし、あまり人付き合いが上手でなかった事もあり、あることがきっかけで仕事を辞めてしまいます。心に傷を負った齋藤さんは、何とか立ち直ろうと、大好きな山に行っては自然と触れ合って、そして次第に癒されて行きました。そこには沢があり、雑木があり、土がありました。自然の中で育つ雑木は逞しく、生き生きとしていました。こんなにも素晴らしい自然を大切にする仕事がしたい。強くそう思いました。

2019年4月、齋藤さんは一念発起して辻和庭園を創業します。社名は、生まれ育った辻興屋と自分の名前から一文字つづ取りました。一人親方からのスタートでしたが、先輩たちから教わった技術と、そして自然への思いが支えとなり、ご縁を繋いで今年で6年目を迎えています。

木が再生する力を技術で手助けする

仕事中は常に木の気持ちになって

修行時代に仕事を教わって行く中で、できる職人は「木を大切に扱う」と教えられました。その言葉がずっと齋藤さんの胸にあります。

「日本の庭というと丸く格好よく剪定された木を想像すると思いますが、実は木にとってはあまり良くないんです。中の枝まで光が届かず、中が枯れてしまうんです。だから僕は透かし剪定と言って密集した枝をすいて透かす、やり方を提案しています」

「また、枝を剪る時にチェーンソーなどの機械を使う場合がありますが、切り口がグチャグチャになってしまって、再生する力を奪ってしまうんです。だから僕は機械は使いません。一つづつ剪る角度、位置を考えて剪定します。角度、位置が悪いとカルスが巻いていきません」

一回ずつそんな事を考えているのですか?と聞くと「はい、好きなので」と笑っています。

「木を植える時はまず土を見ます。水はけがいいかどうかがすごく重要で、現場は雨の日にも見に行って状況を判断します。時には暗渠を入れたりして、まず元気に育つ環境を作ってあげます。そのまま植えても2、3年は生きているかもしれませんが、長生きしません。せっかく植える木ですから、ずっと一緒にいて欲しいって思います」

齋藤さんが造園の仕事を通してお客さんに提供しているものは、見た目がきれいになるということだけでなく、お客さんと同じくらい、もしくはそれ以上に庭木に愛情を注いであげることかもしれません。

仕事を評価してもらうことについて

嬉しいのと同時に次へのやりがいにつながって行く

4年前から荘内神社のお仕事をさせていただいています。

護国神社とお稲荷様も同時に手掛けさせていただいています。

荘内神社は鶴岡市の中心で、歴史のある場所ですし、観光客も含めて多くの人が見ますので、そんな大事な所を任せていただきとても光栄に思っています。ただ同時にプレッシャーもあります。変な仕事はできないぞと。

石原宮司さんがそんな僕の仕事振りを見て下さり、「君の仕事はきれいだ」と言って下さいました。励ましの言葉と思い、素直にとても嬉しかったです。

どんな仕事もそうでしょうが、喜んでもらえると次へのやりがいになります。

一度仕事をさせたいただいたお客様から翌年も声をかけていただいたり、紹介していただいたりすることが多いですが、そういう時は仕事を評価していただいたなあと思ってとても嬉しいです。

特にいい仕事ができた時はinstagramで写真をアップしています。ぜひご覧ください。

「すいません、一ついいでしょうか?」「何でしょうか?」齋藤さんは読者のみなさんにぜひ伝えたいことがあるそうです。

「実は、落葉樹の剪定は冬の時期が木にとって一番いいんです。葉を落とす11月下旬〜3月上旬時期まで休眠に入ります。水分の吸い上げが止まっているので、剪った影響が最小限です」

「常緑樹は、冬までに葉に蓄えた養分で冬を越します。だから冬ではなく、寒さを越した春に剪定するのが一番いいです」

「お盆前等夏に剪定のご依頼を多くいただきますが、夏は木が光合成をしています。葉がなくなると根から吸い上げた水分を葉から蒸散できなくなり木には良くないんです。僕は出来れば落葉樹は冬のうちに剪定してあげたいと思っています。ぜひ年間を通して計画を立てて、庭木を管理していただければと思います」

※落葉樹の例《桜、モミジ、カエデ、イチョウ、サルスベリ、コナラ、ケヤキなど》

※常緑樹の例《マツ、コウヤマキ、ツバキ、ヒバ、スギ、》

※紫陽花、ツツジ、花が咲く木は咲き散る頃の手入れが翌年、花芽をつけやすい。

木を大切に扱うこと、職人の基本を齋藤さんは常に持ち合わせています。

剪るのではなく、植える・創る仕事を増やしたい

これからの若い人に木の良さを広めるのが使命と思っています

庭師の仕事は木を剪ったり、揃えたりする事と思われるかもしれません。確かにそれもすごく大切な仕事です。でも僕はこれからは創る事も増やしていきたいと思っています。

最近は庭のない家が増えてます。コンクリート敷きにしてカーポートがあって、庭はほとんどない。管理が面倒とか色んな理由があるのかもしれませんが、やっぱり自然の木がある暮らしはいいんです。毎日の暮らしの中に自然の木々があると、癒されますし、その成長と一緒に暮らして行くというのはとても素敵なことだと思うんです。同世代や若い人たちにもその良さを知ってもらいたいと思っています。雑木の庭は洋風の家にもよく合いますよ。

少しのスペースでも方法はありますし、どんな木がいいかのご提案、庭の設計なども行いますので、少しでもご興味があれば気軽にお問い合わせ下さい。「自然が身近にある生活」を一人でも多くの方に体験して欲しいです。そのお手伝いをすることが僕の喜びですし、この仕事を選んだ理由なんです。

齋藤さんは取材の中でも「木はいいなあ」「自然がいいんです」と何度も口にしました。こういう真面目でひた向きな若い人が、自分の好きな仕事でやっていける庄内地域であることは、とても重要なことだと思いました。

取材を通して、齋藤さんは「根」が優しい人だと感じました。造園業だけに。

余談:齋藤さんは仕事着にもこだわりがあります。辻和庭園さんの法被(作業着)は長岡の専門店で特注で作ってもらっています。背中にはデザインされた文字で「感謝」という文字が書かれています。格好いいのでぜひ注目して見てください。

聞き手/北風秀明

公開日・更新日/2025/03/23

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