広島風お好み焼き安藝 - LOVE庄内 e-Towns

Vol.8

会員ID 488

広島風お好み焼き安藝（あき）

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Special Interview

スペシャルインタビュー

鶴岡市東新斎町のIZUMO前に大きな看板がある、広島風お好み焼き専門店。薄皮のそば入りが特徴。鉄板焼きのサイドメニューも豊富で、食事だけはもちろん、ビールと一緒にも最高。ファミリーが使いやすい座敷の席もある。

ショールームを改装したとのことで、窓が大きく開放的な店内では、車が行き交う鶴岡の街並みを見ながらゆっくりと食事ができます。
全メニュー注文してから焼いてくれるので、出来たて熱々を食べられます。店主の橋本さんはパッと見少し怖そうに見えますが、全然そんなことはなく、とても気軽にお話しができます。カウンター席もあるので、作っている姿を見ながら出来上がるのを待つってこともお勧めです。
特に、広島カープファン、ジャズファンは楽しい時間が過ごせますよ。

広島出身の橋本さんが郷土愛あふれる店を開店

現在の広島県は昔、安藝国（あきのくに）と言った

橋本さんは広島生まれの広島育ち。大学で東京に出るまでは、広島の町中にあった小さなお好み焼き屋によく通っていた。

当時は住宅街のあちこちに車庫を改造した位の、4〜5人が鉄板を囲むような小さな店がたくさんあった。高校時代には学校を抜け出して気に入った店に昼ご飯を食べに行ったりした。

家でもしょっちゅう家族でお好み焼きを焼いた。こうした味は橋本さんの原点になっている。

結婚して鶴岡に来てからは、奥さんの実家の住宅設備工事会社（佐藤管工設備株式会社）で働いていたが、ある時会社の社宅が空くこととなり、「広島風のお好み焼き屋をやってみよう」と思い立った。当時すでに社長となっていたので、二足の草鞋を履く形でのスタートだった。店名は自分の出身地から安藝（あき）とした。

小さい頃に家で作っていたとはいえ、お客様に提供するのは初めてのことだったので、オープン前にオタフクソース（お好み焼きソースの会社）で開店前研修に通った。その時にキャベツは「押さえつけないことと」指導されたが、家の作り方はぎゅっと押さえつけるやり方だったので、今でも家の作り方でやっている。「こっちの方が絶対にうまい」と橋本さんは語る。

広島風のお好み焼きは皮が薄く、焼きそばが入っているのが特徴で、庄内の人たちに受け入れられるかと思ったが、開店から大変好評だった。店の場所が分かりにくかったので、2007年に現在の場所に移動した。

現店舗はそれまで住宅設備の展示場だったため、窓が大きく開放的な作りになっている。

橋本さんの故郷広島に対する思いは深く、お好み焼きの味の決め手となるネギは、生まれ育った観音地区から都度取り寄せている。店内には広島カープのグッズやユニフォームが並び、メニューには呉焼き、江田島焼きなど地元の地名が入ったオリジナルメニューも考案した。

好きなことを仕事にする喜び

大好きなジャズとお好み焼き、そして広島カープに囲まれて

橋本さんは大学時代にジャズのビッグバンドサークルに所属して、音楽に没頭した。担当は花形トランペット。卒業後も就職せずに職業として音楽の道に進んだ。当時は歌番組がたくさんあり、山口百恵やキャンディーズなどのアイドルも生演奏で歌う番組が多かったので、仕事はあった。しかし、結婚を機に鶴岡に来ることになり、東京でのバンド生活にピリオドを打った。

鶴岡に来て慣れない仕事をしながら、どうしても音楽を続けたいと思い1989年にメンバーを集めてスイング・クレインズ・ジャズオーケストラを立ち上げた。地元で音楽が好きな人が集まって、今でも精力的に活動をしている。

橋本さんは今も現役のトランペッター兼バンドマスターとして奮闘しており、練習も毎日欠かすことがない。練習場所はどこですか？と聞くと「ここ、ここ」と店を指差した。開店前の1時間、店で一人練習をしているそうだ。「吹かないと音が出なくなるから」。

お好み焼きもジャズも、そして広島カープも、お好み焼き安藝は橋本さんが愛してやまないものをお客さんに提供するお店だ。だから全部が一生懸命。もちろんお好み焼きも絶品。

話題も豊富なので、ぜひ仲良くなってみて下さい。

山大生のアルバイトとの交流

留学生、大学院生も卒業するまで働いてくれる

安藝のアルバイトは、山大が近いということもあって、歴代山大生が多い。そして何故か女性が多い。

ほとんどの学生が卒業するまで働いてくれる。何か理由があるのかと思って聞いてみると「まかない付きだからのぅ」と橋本さんは笑う。「長く居ると自分でお好み焼きを焼けるようになる」とのこと。

卒業して遠くに行っても、遊びに来てくれたりする時はとても嬉しい。時には彼氏を連れてくる子もいたりして。

特に印象深いのはインドネシア出身で山形大学に通う妻と、アフガニスタン出身の夫のご夫婦で、夫のミル君が働いてくれたこと。多分自国へ帰れば優秀な人材なのだろうけれども、ここではそんなことは関係なく自国とは違う文化の中で一生懸命働いてくれた。

卒業して夫婦でインドネシアに帰ってから1年以上経った今でも、たまにLINEで連絡が来るという。異国の地で働くということは、余程安心で楽しい環境だったんだろうと、お店を見回しながら思った。

「インドネシアに行かないと、ですね」と言うと「そうだね」と橋本さんは言って、壁に貼ってあるアルバイトさんたちとの写真を見せてくれた。

お店をやる人いないかなあ

いつまで続けられるか、元気なうちは続けよう

橋本さんは世間ではとっくに仕事を引退してもいい年齢だ。

好きな仕事だし、常連さんもいるので毎日楽しく続けてはいるが、今後のことを考えるといつまで続けることができるかと思うことがあるらしい。

「誰かお店をやりたい人はいないかね？」「本気で言ってます？」

「もちろん」

「お好み焼きを焼くのは難しそうですが、誰でもいいってことでもないですよね？」

焼くのは簡単だよと言うので、焼き方を聞いてみると、特に火加減についてはすごくこだわりがあって、覚えられないくらいだった。もちろん簡単にとは行かない。

取材の当日は子供連れの家族が2組、座敷席の方で楽しく食事をしていた。「おいしい〜、これも食べていい？」「はいどうぞ」と会話が聞こえてきた。

他に男性のおひとり様、年配の夫婦など、世代を超えた客層が来店していた。

橋本さんがお好み焼きを通して作ってきた輪（和と言ってもいいかも）は、庄内地域になくてはならないものの一つなんだなあと感じた。

聞き手／北風秀明

公開日・更新日／2025/03/10

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