編集室ブログ

おめでとう♪ 第19回 全美連 作文コンテスト 最優秀賞 受賞

e-Towns2018年3月号特別掲載!

ご自身の体験から、薬剤性脱毛と医療用ウィッグのサポート活動に美容師として取り組んだ経緯をつづっています。

「新しい時代の美容の使命」

鶴岡市 「きぬがさ美容室」 西村 順子

「美容師達が社会貢献するということ」それは、平成二十四年一月、一人の乳腺専門医が、山形県美容組合に訪ねて来られたことから始まりました。抗がん剤で抜けてしまった髪の毛、眉毛の無くなってしまったお顔のお手入れ方法やメイクのアドバイスなどを、患者さんに教えて欲しいと言うことでした。

実は私は、平成十八年に抗がん剤治療の為に全身の脱毛など、一年間決死の思いで乳がんを闘い抜いた、まさに経験者でした。私のがんは、ステージ中のAでした。決して安易に出来ない状況でしたし、ウイッグを一年間かぶっての闘病生活でした。女性にとっては命の次に大切と言われる緑の黒髪や全身の体毛が、一週間程の間に抜け落ちてしまうのですから、命と引き換えとはいえ、その辛さは体験した者でなければ分からないと思います。

がん患者が直面する三つの苦しみがあります。後遺症、脱毛などの肉体的苦しみ・死の恐怖、うつ状態等の精神的孤立・職場退職、引きこもり等社会的苦しみなどで、これが一気に押し寄せてきます。特に家庭を持つ方にとっては、病気を抱えて仕事・家庭との両立は、心が折れそうになる程の試練です。それに立ち向かい、闘病を続ける患者の気持ちにより添うアドバイスは、とても高度な難しいことだと思います。更に一番の問題点は、外見上のこと等が原因で、行き付けの美容室から足が遠ざかるということです。ナイーヴな患者の心理、健康管理の大切さ、お声のかけ方、心を込めた接客などが必要とされ、上辺だけの言業や行為は見透かされます。

医師からのこの申し出は、一時期保留のまま過ぎ去り、組合員の反応はとても消極的だったように思えました。組合としては、現在マンネリ化している美容業界を活気づけ、新風を吹き込み、社会が求めている美容のニーズを引き出すことができますから、引き受ける方針だったと思います。この活動は、患者さんの難しい心のあり方に踏み込み、奥が深く個人的範囲では収まらない規模でしょうし、親身なアドバイスが必要とされます。実体験でそのことが分かっている者に、白羽の矢が立てられました。

私は常々、これからの美容師の質の向上の為には、社会活動は絶対必要だと思いますし、新しい時代の美容の使命であり、業界のとるべき道だと思っていました。大勢の力を合わせれば、きっと良い方向に向かうはずです。当時の私の体調は、薬を飲み続けていましたが、闘病生活は無事五年が経過していました。日頃より、何か社会のお役に立ちたいという思いがありましたので、代表をお引き受けする決心を致しました。この活動には、美容以外に医療の専門的知識が必須です。又、個々の美容室でも、常にお客様に活動状況を訴え、運動を広めることが必要なので、組合と連携した活動を始めることに致しました。

最初に取りかかった課題は、メイクや頭皮のお手入れ方法、患者の経済的な不安を少しでも取り除くということでした。抗がん剤治療にかかる費用は想像以上に高額で、ウイッグを買いたくても手が出ない現実もありますし、医療用ウイッグの存在を知らない方も大勢います。病院で販売している大手業者の価格帯は、十万〜二十万円以上で、とてもすぐに購入出来るものではありませんでした。しかも、抗がん剤治療をやめれば、髪は又生えてきます。一年位間に合えば良いのですから、お客様には五万円位の医療用ウイッグが品質も安定しており、購入しやすい値段であるとお勧めしました。現に私も、五万円のウイッグを一年間かぶっていました。今でも時々美容室内に展示して、全頭脱毛の悲痛さをお伝えしています。

がんという病気は年々右肩上がりに増えており、二人に一人ががんにかかると言われています。残念ながらその為に、年間三十五万人以上が亡くなっているのが現状です。  半年を経た平成二十四年七月、ついに山形県薬剤性脱毛サポート美容師会は設立されました。そして、山形県美容組合独自の質格認定制度が設けられ、十一月に研修を受け合格したサポート美容師達が百四名誕生致しました。

山形県では、平成二十五年より、「健康山形安心プラン」を作成して、企業と連携したがんの早期治療に取り組み始めました。山形県美容組合でも、抗がん剤の服用に伴う脱毛や、肌荒れなどに悩む患者を支援するサポートを行っています。その一環として、多くの患者の方々が美しく活躍できますように、具体的美容技術・知識を身につけています。

薬剤師からは皮膚学を、ウイッグの専門メーカーからは医療用ウイッグの取り扱いやヘアーカットスタイル、美容の専門家からは黒ずんだ皮膚を明るくカバーさせ、眉毛の描き方などのメイク方法、脱毛に対する美容知識を身につけました。乳腺専門医からは抗がん剤治療の過酷さや、美容の役割の必要性をお聞き致しました。実際にがん患者の立場からもお話を伺い、体験談から必要な具体的サポートの仕方を学んでいます。医療は日進月歩で進んでいますから、三年ごとに資格更新を計り、新しい知識を身につける独自のシステムが取り入れられ、一度目の更新が終了しています。

平行して、サポート美容師会は、山形県知事にウイッグの助成金を申請致しました。車いすや、松葉杖を使用・購入する際は、色々なサービスが受けられます。病気で苦しんでいる方達に少しでも心の支えになればという思いで、県知事や関連する役所等に請願致しました。女性の知事ということもあり、外見の美だけでなく、強く生きていく為の必需品であることを理解して下さいました。平成二十六年度、山形県在住で抗がん剤治療による脱毛の為に医療用ウイッグの購入申請者には、県と市町村で折半の最大一万円が、二十八年度申請者からは、最大二万円が支給されることになりました。この取り組みは四年目となり、昨年度は年間四百五十一名の方が助成金を受け取ることが出来、大変喜ばれています。

健康や心と体の元気を保つ為に、どうあるべきかを考えると、マイナスに見える変化やショックなことが起きた時こそ、ものの見方が変わるチャンスでもあり、力ともなります。

薬剤性サポート美容師の取り組みは、美容室の大切なお客様や地域の方達が、少しでも喜んで頂ける社会的活動の一環として、ニュースや健康団体からも取り上げられています。医師と美容師と患者というそれぞれの立場から、地域の基幹病院・サポート病院と連携して、お互いに助け合うという山形県初の試みは、現在美容室から発信して、社会貢献という形で徐々に、地域社会とのつながりを深めています。

西村さんには厚生労働大臣より賞が贈られました

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